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2019年度早稲田祭どらま館企画『ピンチ・パンプキン・パパパなんとか』

ピンチ・パンプキン・パパパなんとか

 

登場人物

A・男性=脚本家

B・男性=魔法使い

C・女性=映画俳優

D・男性=宇宙人

E・女性=橋本ゆかり

 

小道具

衣装箱&衣装いくつか・椅子・スマホ1ケ・杖?

 

照明

薄暗い・明るい・普通・上手強・中央ピンの5種類の使用を考えています。

本文中ではこのように表記

 

音響

音響なし

 

 

 

以下本文

 

 

暗転下

ACD位置につく

 

薄暗い

俯き応援団な感じで3人立ってる。BE下からイン。森。

 

Bこっちです

Eあの

Bはい?

Eあのっ

Bなんですかうるさいなあ

Eあの、やっぱりいいんですけど

B良いって何がです?あ、私が素敵ってことですか?

Eそうじゃなくって。その・・・いかなくてもいいかなー、って

Bはあ?行きたいって言ったのはそっちじゃないですか

E確かに言いましたけど

B徒歩だとは思わなかった、って言いたいんですか?言っときますけど、それに関してはカボチャ持ってない貴女が悪いんですからね?

E・・・はい?

Bカボチャですよ、カボチャ。ハロウィン終わりだからですか?

Eえ?

Bハロウィン終わったから、カボチャ捨てちゃったんですか?

Eえっと、そういうわけではないです、はい。カボチャ・・?

 

間(B森中を多少前進する)

 

Eあの、というか・・

Bあーあ。せめてハツカネズミさえいればもう少し楽だったんですけど。なんで持ってないんですか?

Eハツカネズミ。普通いない・・と思います

Bなんですかもー。これじゃ全然魔法使えないじゃないですかぁ〜

Eというか!

B・・・なんです?

Eあの、私・・・帰りたいんですけど

Bはあ?行きたいって言ったのはそっちじゃないですか

E確かに言いましたけど

Bあ!ひょっとして貴女、私のことを信用してませんね?

Eまあ、はい

Bやっぱり。私は本当に、良い魔法使いなんですからね!

E何を言ってるんですか?

B何って、私ほどの良いやつはいませんよ?わざわざ貴女のために

Eそうじゃなくて

Bじゃなくて?

E・・・魔法なんて、あるわけ ないじゃないですか

Bああー!言いましたね!これだから現代人は! 

Eえ、ごめんなさい

B屈辱です!だいたい、あなたが望むから来てやったんですよ?

Eそれも良く分からないんですけど。私は別に

B抜け出したかったんでしょ、あそこから

E・・それはまあ、そう、ですけど

B・まあいいです。最終的に、あなたは私に泣いて感謝することでしょう。ほら、そろそろですよ

Eそろそろ・・

 

明るい

 

Eわっ

Bえーっとこれは、私ここですかね。(所定の位置につく)

(Eついてく)

Bああ違う違う、あなたはここー(所定の位置につかせる)

 

待ち

 

Eなんですかこれ

B黙って。すぐ始まります

 

然るのち(始まりま『す』)、Eを除く4人首バッとする

 

Aむかしむかし、わりとむかし

D消費税率とやらの5%だった頃

Bそんなに金持ちでもない家に

Cそんなに貧乏でもないうちに

A綺麗な娘がおりました

 

草分け(鬱蒼としていた木々が超自然的な力で分かれる様)

 

Eえ?・・嘘っ

Bピンチ・パンプキン・パパパ・パニッシャー!

 

Bはい。まあ、そういうわけです

Eいや、あのこれどうやって

B魔法です。信じてもらえましたか?

E・・・・夢?

B魔法です

E・・すごいんですね

Bいかにもです。さあ付いてきて下さい

Eでも私

B大丈夫です。すぐに見合った振る舞いを叩き込んであげますよ

E・・はい

 

BE上はけ。AC下から椅子・衣装箱を持って出る

上手強にしたのち、普通にフェード

 

Aはぁー

Cお疲れー

A『お疲れ』じゃない。『お疲れさまです』だろう?

Cはぁ?・・・はあ。お疲れ様ですー

Aおう。しかしこれからだぞ、きついのは

Cえー?まあ、そうですねえ。次何でしたっけ?

A怪物のシーンだよ。あいつら襲うやつ

Cあーそれだそれだ。あれ疲れるんですよねえ。私出なくて良いですか?

Aいい訳ないだろ

Cえー?なんで一人で何役もやんなきゃなんないんですか。違う人にすれば良いのに

A今更文句か?もう変わんねえよ

C私役者初めてですよ?

Aうだうだ言うな。仮にも仕事だろ

Cまあそうなんですけど。ああブラック。疲れるー。(時計)そろそろてっぺん超えますよ

Aバカ言え、まだ昼前だ

C本当ですかー?室内だと昼夜わかりませんね

ながら着替え。

Cだあもうダメです。休憩しましょう(倒れこむ)

Aワンシーンしかやってないのになんでそんなヘトヘトなんだよ

C・・・普通、っはぁ、疲れ、っはぁ、ますって!

Aそんなじゃなかっただろ

Cいやいやクタクタですよ。逆になんで貴方そんな元気なんですか?

Aは?いや普通だろこのくらい。

C普通じゃないですってー。現にほら、貴方――〜座ってるじゃないですか

Aそのくらいいいだろ。じゃあ今も演技してる橋本はどうなるんだよ

Cゆかりさんはほら、本当に特別な人じゃないですか。NGもないし

A当たり前だろ、プロなんだから

Cプロどころか超人ですよ!比べるのもおこがましいです!

Aあー、まあ確かにな。例えが悪かったな

C凄い人ですよねー。私、あの人に憧れてオーディション受けに来たんですよ

Aそうだったのか

Cはい。昔一人でいた頃に、テレビで見たゆかりさんのハツラツな演技に勇気もらって。私もあの人みたいになりたいなーって!

Aほお

Cいきなり共演できてラッキーって思ってたんですけど、まさかこんなにキツいとは。早くも心折れそうですよ

Aなるほどな。だがなんにしても、こんなんでへばってたら乗り切れねえぞ

Cいいや普通疲れますって。いいですか?いくらワンシーンだからって、80回もリテイクしてたら普通の人はヘトヘトです!

Aは?リテイク?

C撮り直しですよ。まあほとんどNG出したの私でしたけど

A何言ってんだお前?

C何って・・・80回は言い過ぎだったかもしれませんけど

A違う!芝居なんだぞ?一本勝負に決まってるだろ

Cはい?あー、そういう心意気の話ではなく

A舞台なんだから、撮り直しなんかしねえだろ

 

 

C役者さんってのは、なんか、立派ですねえー

Aどういう訴えだそれは

C・本気ですか?

Aああ教えてくれ

C今、撮影中ですよ?映画の

Aは?

C『ピンチ・パンプキン・パパパクライシス』。所沢辺りで小規模公開するって

A何だその妄想。大層なもん作り上げたな

C妄想じゃないですよ!そんなことも知らずに撮影に来たんですか?

A・・・

Cなんとか言ってくださいよ

A真面目に答えるのも馬鹿馬鹿しいが。まず撮影じゃねえ。それと来たんじゃねえ、俺が立ち上げたんだ

C立ち上げた?

Aそう。劇団アリシア旗揚げ公演『ピンチ・パンプキン・パパパパニッシャー』、俺はその脚本家だよ!

Cあの、色々言いたいことはあるんですけど、タイトル間違ってますよ

Aなんだよ

Cパパパパニッシャーって。何をパニッシュするんですか?

Aそれは、まあ

Cノリで決めたんでしょ

Aちがっ、

C・・・『ちがっ』?

Aああもう、ノリだよ。それよりなんだパパパクライシスって。パ関係ねえじゃねえか

Cそれは知りませんよ。私脚本家じゃないし。でもカッコよくありません?パパパクライシス

Aカッコよくねえよ。パ重ねりゃカッコいいと思ってんじゃねえよ

Cもっとパ重ねてる人が何言ってるんですか

Aそれは、あの!あれだ、パニッシャーに繋がってるからカッコいいんだよ!

Cでもパニッシャーってのはノリなんですよね

Aそうだけど!

C怒らないでくださいよ

A怒ってないけどぉ!!

 

B上から出る

 

B・・・あの、すいません。こっちやってるんで静かにしててもらえます?

Cあ、すいません

A悪い

 

B下にはける

 

Cほら怒られちゃった。脚本家さんのせーいだ

Aお前がふざけたこというからだろ

Cふざけたことなんて言いました?私

A何だ『ピンチ・パンプキン・パパパクライシス』って

Cまだそのネタ引っ張るんですか?サムいです

Aお前な・・・。真面目にやるぞ。そろそろ出番だ

Cまだ先ですよ。そんな一気にシーン撮るわけないでしょう

Aそんなわけないだろ。次の暗転で入るぞ

C暗転って。本当に舞台上がりなんですね

Aだから!

Cああごめんなさい。貴方の集中方法にケチをつけるわけではないんです

Aお前・・・ふざけんなよ?

Cふざけてないです

Aもう!とにかく行くぞ!

Cああちょっと!

 

AC上はけ。BD下から入る。しげしげ

 

D座っていいぞ

Bああ、お構いなく

D・・・奴ら、勝手にコックピットに入ったりしないだろうな

B入った所であの人たちには動かせませんよ。技術がありません

Dだが貴様らはその・・・体液で動いているんだろう?ビシャビシャにされたらたまらんぞ

B血液のことですね。その体液はぶちまけるようなものじゃないです。呼吸ができなくなってしまいます

D呼吸・・・ああ呼吸か。大気からエネルギーを取り込むのは効率的でいいよな

B地球では当たり前の方法ですよ

Dその点は羨ましいよ。私たちは固形物を摂取しないと生きていけないからな。呼吸でエネルギーをまかなえる貴様には馬鹿馬鹿しく聞こえるかも知れないが・・・

Bあ、いえ。食事は私たちもしますよ

Dは?・・・え、じゃあ呼吸は何のためにするんだ?

Bエネルギーを取り入れるためです

Dええ・・・

Bまあまあ。生態調査はまたの機会に。今は観察段階でしょう

Dうーん、まあ、そうか。それで?

B何でしょう

D何者なんだあの二人組は

B二人組っていうと、さっきいた二人ですか?

Dそうだ

Bあー、あの二人、別に組ってわけじゃないですよ。一人は舞台演劇の脚本家さんで、もう一人もゆかりさんの・・

Dそんなことはどうでもいい。聞きたいのは、なぜあいつらまでここにいるのかということだ

Bえ、そりゃあまあいるでしょうよ

Dどうしてそのような回答ができるんだ?

Bはい?

D私は貴様に、橋本ゆかり一人を連れてこいと指令したのだが?

Bはい。そうでしたね

Dなぜ鹵獲対象を増やした?

Bそれは、考えてませんでした

Dは?

Bええと・・ほら、橋本ゆかり一人だと正しい地球人の姿が掴めないじゃないですか。だって彼女は特別だから(モードかえ)

Dなるほど。その懸念は否定できないな。奴は特例が過ぎる

Bでしょう?

Dただし。そうした判断はこちらが下すべきものだ。勝手な行動は控えろ

Bはーい

D理解しているのか?

Bわかってますよ。ゆかりさんは特別ですもんねー

D愉快そうだな。何を企んでいる?

Bそりゃあもう、色々です

D・・まあ、貴様に何の考えがあろうが私の知ったことではない。精々励め

Bはい。・・ときに、ゆかりさんはどうして特例なんですか?

D貴様のような地球人には関係のない話だ

Bふふーん

D何を笑っている

B別に何でもありません

D・・・はあ。とりあえず、あいつらの観察だ。ついてこい

Bああ、はい

Dくれぐれも、私の正体はバラすんじゃないぞ

Bああ、そりゃあもう。大丈夫ですよ

 

D上にはける

 

中央スポット

B・・ん。かくして、まあ滞りなく。娘は念願の舞踏会に着きました。当初の予定とは少し異なる部分もありますが問題はありません。魔法のドレスに身を包んでいるので、お城にいた誰もが、彼女の美しさにびっくりしました。

 それでは引き続き、『ピンチ・パンプキン・パパパクライシス』をお楽しみ下さい

 

袖から打ち手。普通に戻る

 

Bあっ、あっOKですか。ありがとうございます。・・・あっいえいえそんな。はいそんな。はーいお疲れ様です

Cお疲れー・・・さまです?

Bお疲れでいいですよ

Cそっか、お疲れ。にしてもすごいですねえ。一発OKじゃないですか

B上手くできたか不安なのですが

C OKもらっといて何言ってるんですか。

Bやっぱりお芝居って慣れません。周り変な人ばっかだし。どうしたらいいんですか?

C私も知りたいですよお。NGばっか出しちゃうし

Bそうでしたね。厳しいんですね、自分に

Cえ?

Bああいや、なんでもありません

Cそうですか・・あなたは、普通ですね

Bはい?

C役者さんって変な人が多いみたいだから

Bああ。脚本家さんのことですか

Cやっぱりわかるんですね。・・あの人本当に脚本家さんなんですね

Bまあ、そうです

C変な人・・

Bあの人に関わるの、初めてなんですか?

Cはい

Bへえ

C・・・はい

Bええと。あなた、どうしてここにいるんでしたっけ

Cどうしてって、映画のためですけど・・あっ、普通に答えちゃダメなんですね!ええと

Bああいやいや、普通に答えていいんですよ。何で映画に出ようと思ったのかなーって

Cそれは・・ゆかりさんみたいになりたかったからです。おこがましいのはわかってるんですけど

Bゆかりさんみたい、とは?

Cそれはもちろん、人に勇気を与える演技が出来るっていう意味ですよ!私はあの人の存在に文字通り生かされているんです!あの人が居なければ、今の私は考えられません!勿論すごいのはそこだけじゃなくって、いつまでも初心を忘れない無邪気さを持っている点ですとか、あそれから、これはこの前のTVスペシャルで特に顕著だったんですけど・・(

Bああストップ、ストップ!

C何でです?まだ途中なのに

Bなんというか、聞いてる方が申し訳なくなって来ました

Cどういうことですか?

Bああいえ、こっちの話です

Cそういえば、貴方はゆかりさんとのシーンがありましたよね!どうでした?

Bどうでした、って・・まあ普通。ああいえ!彼女は特別でした!

Cですよね!やっぱりカリスマ感じちゃいますよね!

B直接話はしましたか?

Cいいえまだです!きっとカメラの外でも凛としてて、色々凄いんだろうなあ!

B(少しの間ののち微妙な笑い)

Cなんですか?

Bいえ、橋本ゆかりさんの話は、一旦やめにしましょう

Cえー?何でですか

B何でもです

Cいきなりどうしたんですか?何か変ですよ

B役者さんなんてみんなどっかしら変なものですよ。脚本家さんもそうだったでしょう?

Cんー、まあ、はい

B私なんて随分まともな方だと思いますけどねー。さっきお話してたもう一人の方なんかもっと凄かったんですから

Cもう一人、というと・・

D地球人!

 

D下から入る

 

Bああ、噂をすれば

D貴様、どこに消えたかと思えば。これ以上は流石に看過できんぞ

B何をしてたわけでもないじゃないですか。許してくださいよ〜

Cあー、確かに。変な人ですねえ

D・・自分の立場もわからぬ被験体が、何をほざくか

Bちょ、その発言はまずくないですか?

Cひけんたい?どういうことなんですか、地球人さん

(・・・?)

C地球人さん?

Dは?私か!? 

Cだって『地球人!』って名乗りながら現れるから

Dそれはこいつのことを呼んだんだ

Cそうだったんですか。・・よばれてますよ。地球人さん

Bあ、どうもどうも。・・貴方も、地球人ですよね

C確かに。地球人じゃちょっと主語がでか過ぎですよねえ。あなたも地球人じゃないですか(Dに)

D私は地球人ではない!異星人だ。ヒトでもない

Bあー

C異星人?って言うと、宇宙人?

Dああ。だがやめろ。その漠然とした呼び方は好かん。大体宇宙に住んでいる生命体という意味では貴様も(

Cなんて星に住んでるんですか?

D人の話は最後まで聞くものだ!

Bヒトじゃないんじゃなかったんですか

Cえー宇宙人!私初めて見たなあ。宇宙人ってあの、えっと、どうなんですか?

D質問はまとまってからしろ!

Cえっとえっと、住民税って……

Bちょっと!(グィッ)

Dっと、何をする!

B流石にこれはまずいです。接触しすぎですよ

Dそれの何が悪い

B何って、貴方が宇宙人ってことは内緒なんじゃなかったんですか?

D・・あ

Bあほ!

D完全に失念していた。私としたことが・・。どうすればいい?

Bはい?

Dどうすればごまかせるかと聞いている。知恵を出せ

Bえ?さっきは口出すなって言ってたくせに!

D状況が変わったんだ。そのくらい認識しろ!

Bちょっと、貴方ねえ!

Cあのー、  私、何も聞いてないですよ

Bえ?

Cだから、私はそのー。・・・宇宙人なんて、いるわけないじゃないですか!おとぎ話じゃあるまいし。私は、信じませんよお!

D貴様・・、現実を捉えることすらできなくなったのか?(

Bあーはいはい黙って!そうですよね。宇宙人なんているはずありませんよね

Dなんだと?貴様は

B黙ってて下さい

 

C手招き・BD付いてく・D制される

 

C変わってますねー

Bはい。すごいですよね

Cいやあ、あれは・・俳優さんってみんなそうなんですね

Bはい

C私もちょっとくらい変なこと言った方がいいんですかね。映画俳優として

Bそれは、まあどうでしょう。貴女はそのままでいいと思いますけれど

C何か考えておきますね!

Bええ・・

 

DBを引っ張る・C制される

 

D貴様、何度も言うように私は・・

Bわかってます。宇宙人なんでしょう?

D・・あ、ああ。理解しているなら、良い・・

B誤魔化したんですよ?

Dあ?

Bだから、まあとりあえず安心ですね

D・・ああ成る程。撹乱か

Bはいそれですそれです

D協力に感謝する。だが、貴様のことを完全に信用しきったわけではないからな

Bはいはい。これ以上ボロ出す前に戻りますよ

 

BD上に出てく

 

Cどこ行くんですか?

Bああ、あの・・ちょっと

Cはあ

 

E上から入ってくる。浮き足立つC

 

C橋本ゆかりさんですよね!

Eはい

Cあの、私、ずっと、えっと、その、ええ・・

Eあの

Cはい!

E・・ちょっと、静かにしててもらえます

Cあ、はい・・

E・・・座って、いいですか?

Cはい

 

間(ケータイいじるE)

 

Cあの。怒っ、てますか?

E何でそう思うんですか?

Cえ、ああ、さっきこっちうるさかったから。撮影中だったんですよね

E撮影?・・ああ、そうです

Cはい?

Eそう、撮影中だったんです。・・・あなた、私のこと知ってるんですよね?

Cえ、ああ、それは、もちろん!中学出て、することなくて、どうしようもなかった頃に、ゆかりさんが出てたお芝居みて、何でもいいから何かやろうって気持ちになって・・・・とにかくずっとファンです! 

Eそうなんですね。そうなっているんですね。

Cはい!

 

 

Cゆかりさん?

Eごめんなさい

Cいきなりどうしたんですか

Eそれ、私じゃないんです

Cえっ?・・えっ?どういうことですか?

Eだから、その・・映画やTVに出て、たくさんの人に勇気を与えてきたのは、私じゃないんです

Cゆかりさん、じゃない

Eはい。ごめんなさい

Cそれは、ええっと、その・・びっくりです

E貴女なんです

Cはっ?

Eさっき貴女が言ったの、全部貴女のことなんです。映画に沢山出て、私に勇気と夢を与えてくれたのが、貴女なんです

C・・・・・・・・嘘ですよね?私は、信じませんよ?

E本当です

Cいや、そんな深刻そうに言われても。それはさすがに無理が・・

E本当なんです

Cはい

Eそれは、あの人がそうしてくれたんです

Cあの人?

E魔法使いさん。貴女も会ったでしょう?

C魔法使い。ふざけないでくださいよ

E私も最初は信じてなかったんです。でもあの人は本当に、私に魔法をかけてくれたんです。ちょっとやりすぎなところもあったけど、確かに私の望んだことです

C・・何を言ってるのか、わかりません

Eでも、でも私・・ごめんなさい。特別な人の役は、貴女の役は、やっぱり貴女にしか出来ないんですよ。・・・・・私、貴女のお芝居本当に大好きです。貴女みたいになれたらなって、ずっと思ってました

C・・・・・・

E本当にご迷惑おかけしました。それから、魔法使いさんにもごめんなさいと伝えて下さい。・・さようなら

Cああっ

 

E下に出てく(ケータイを忘れるE)

 

気付いたりする

C・・・・・

 

A上から

 

C脚本家さん

Aん

C・・・貴方は、脚本家さんで良いんですよね

Aまだ言ってんのかよ。良いか、目の前の舞台に集中しろ。あいつらの影響を受けるな

Cもう、くどいですよ

 

ながら着替え

 

Cそろそろてっぺん超えますよ

Aバカ言え、まだ昼前だ

C本当ですか?

 

間。着替え終わり

 

Cねえ脚本家さん

Aなんだ

C私って、どうでしょう?その・・映画俳優として

A知るか

Cですよねえ

 

 

C脚本家さん

Aなんだ

C橋本ゆかりさんって、どんな人ですか?

Aあいつに憧れてたってのは本当なんだよな

Cそれは・・よくわかりません

A幻滅したか。まあ仕方ない。あいつはああいう奴だ

Cそういうわけじゃないんです。多分

A・・・?

C私にもよくわかりません

A変な奴だな、お前

C貴方には・・というか、ここの人には言われたくありません

 

B下から入ってくる

 

B大変です!

Aおい、お前そろそろ出番なんだぞ。ほらこれ

Bあ、ありがとうございます。で、そんなことより

Cどうしました?

B橋本ゆかりさんが、いなくなりました

C・・!

Bどうしましょう、まだ出番は残ってるのに

Aそうか。それなら問題ない。奴はプロだ。自分の出番になったら必ず戻ってくるさ

B     あー、そう、思うんですね

Aあいつほど奔放な奴はいないからな。そんなことより準備しろ、準備

B成る程。まあ貴方は良いですよ、それで。問題は・・ねー

C・・・

Bふふーん

Aおい

Bわかってますよ。じゃ、ちょっくらいってきます〜

 

B右からアウト。AとCで下から小道具裏に持ってったのち、中央スポット

一周して左からB

 

Bかくして。娘にかけられた魔法は解けて、魔法のドレスは無くなって、彼女は逃げるようにお城から出て行きました。あとに残されたのは、一つの忘れ物。王子様はそれを手掛かりに本当の娘を探します。・・・・まあつまり、それを拾った人が、今回の王子様ってことになりますよね。ゆかりさんの好みに合わせて数人用意したんですけど、一体誰になったんですかね。私もわからないんですよ。だから今から始まるのは、私の、『ピンチ・パンプキン・パパパなんと(か・・・

Cあの

 

薄暗い

 

Bうおおびっくりしたあ。早すぎませんか

Cあ、ごめんなさい。   あの、ゆかりさんのことで

Bああ、はい。驚きですよね。撮影も終わっていないのに、いきなりいなくなってしまうだなんて。まして、貴女はあの人に憧れているんでしたものね

Cあの

Bあの人に足りなかったのは、少しの時間です。探しに行きましょう。貴女の憧れの人を

Cあの

B手がかりならもう持っているはずだ!

Cあの!そうじゃないんです。そういうのじゃないんです

B・・・はい?何で水差すんですか。空気読めないんですか?

Cいや、だってうるさいから。ここは私の現場なのに

B現場とかそういうのはもう終わってるんです!今はもう私の番・・・。ちょっと待ってください。今なんて言いました?

Cだから、私の現場でうるさいです。大事な時期なのにひどいことしてくれちゃって

Bどうして貴方がそれを知ってるんですか?

C橋本ゆかり。あの子が教えてくれました。優しくするのはいいけど、ちょっと過保護が過ぎましたね

Bどうして

Cどうしてって。決まってるでしょう?疲れたんですよ。慣れないことに

Bでもこれはゆかりさんが

C自分で望んだこと、ですか?貴方ね。ちょっと無茶ですよそれは。憧憬と志望とは違うんです

B・・・

Cなんとか言って下さいよ

B私が間違ってたっていうんですか

Cうーん、どうなんでしょう。私は楽しかったですけどね。久々に若手に戻った気がして。熱心なファンにも会えましたしね。他の二人はどう思っているかわかりませんけれど

B・・・。

Cま、私がこうして私に戻った以上、貴方はクランクアップです。次回があるなら是非呼んでくださいね?魔法使いさん。ああそれからこれ。返しといて下さい、あの子に

B(受け取る)屈辱です

Cふふ

B・・・

Cきっと、もう少し普通でよかったんですよ。こんなに飾ることはなかったんです、最初から

B・・・

Cだって、貴方は普通のあの子を見つけたんでしょう?普通のあの子には、力になりたいって思ってくれる人がいたんでしょう?それで十分なんですよ。きっと

B・・・

 

明るい

 

C・・・なーんて!どうでした?ちゃんと変なこと言えてましたか?私もだんだん映画俳優らしくなってこれたんじゃないんですか?

Bああ・・貴女は良いですよねそれで!

Cもうびっくりですよ。まさかゆかりさんと組んで私を引き込んでくるなんて。貴方だけはそういうことしないって油断してました。映画俳優たるもの、小芝居は嗜みなんですね!

Bばか!

Cで、本当はゆかりさん、戻ってくるんですよね?ね?

 

A下からダッシュイン

 

A早くしろ!

バッ

 

暗転(以下暗転下)

 

C何をですか?

A位置どりだ

Cもう、緊張感あるなあ

A何でもいいから早く付け

D地球人!

C何ですか!

D貴様じゃない方だ。橋本ゆかりが逃走したらしいな

Aあいつならすぐ戻ってくる

Dなんだと?何を根拠に(

B戻ってきませんよお!

Aうるせえ!

C脚本家さん落ち着いて!

Dと言うか貴様ら何をしている。私は(

A良いから位置につきやがれ!

Dまた珍妙な儀式か。今は乗ってやるが次はないぞ

C宇宙人さんは徹底してますね

B付けば良いんでしょ

A衣装はちゃんとしてんだろうな

D衣服か。あの様な非効率な装飾など、我々からしたら(

Cはいはいはいはい。よーい、アクション!

 

 C  B

A      D

全「かくして」明るい

Bこれだけ尽くしたにも関わらず、ゆかりさんは逃げて行ってしまいました。・・酷くないですか?ここまでお膳立てしたの、全部僕なんですよ?こんな屈辱はありません。もうやってられないですよ

C私は少しだけ、この現場に馴染むことができたと思います。だけど、完全にゆかりさんのペースに飲まれて、私はあの人をにがしてしまいました。まだ変な人成分が足りないみたいですね・・。でもこの仕事、楽しいです

D私は最優先個体に逃走を許した。受け入れ難い失敗だが・・まあ想定の範囲内だ。あれを私一人の手で抑え込めるなどとはハナから誰も考えていない。奴は仲間に任せて、私は残った奴等の研究を進めるとしよう

Aどいつもこいつも、自分の役割に向き合わない奴ばかりだ。現実をどう捉えるかは勝手だが、与えられたものを放棄するのは頂けないな。まあ最終的にことが収まれば俺はどうだっていいのだが

Bそれでは、これにておしまいです。めでたしめでたし、というやつです

Cそれでは引き続きお楽しみください。私たちの、ピンチ

Dパンプキン

Aパパパ

 

真ん中スポット

ゆっくり暗転

 

終わり