· 

オギャーが口癖の先輩

 

 こんにちは。今回は,限りなく透明に近い幽霊部員・ベリーによるインタビュー記事です。お時間のある方はぜひご一読を。

 

・インタビュアー :ベリー

  3年代。かつて裏方の一端を担っていたが今は特に仕事もせずにのうのうと暮らしている。将来の夢はシーラカンスを飼うこと。

 

・答えてくれた人:つきみさん

  4年代。役者から宣伝美術まで幅広く手がける先輩。3月には卒業公演が予定されている。先日父親の肩が脱臼した。

 

 

 

卒業公演について

 

―――卒業公演について教えてください。

「組織図としては,主宰をやる人が1人いて,その下で3つの企画が動いている感じ。私は自分の企画で演出と脚本をやって,それから他の企画では役者として出るよ。あとは宣伝美術もやる!緊急事態宣言延長により公演なくなりました!」

 

―――脚本ですか。

「そう,今回使うのは戯曲『食道楽』。北大路魯山人の書いた狂言で80年代に書かれた昔のお話なのに現代の私達が読んでも笑えちゃうの。狂言はもともと平民=私たちが主役のエンタメみたいな作風が多いんだって!」

 

―――では「食道楽」にちなんで,今食べたいものはなんですか。

「すげえ高そうなサンドイッチ」

 

 

 

演出家として

 

―――前に,「今までずっとやってみたかったことに“挑戦”するんだ!」と言っていましたよね。

「演出をね,みんなで考えようと思って」

 

―――どういうことでしょう?

 

「なんとなくこれまでの作品制作は、演出さんが作りたい世界観を役者に伝えて、それに役者が合わせたり他の提案をしてみたり…って作り方が多かったの。たまには、0からみんなで作り上げてみたかったんだよね。」

 

―――そのやり方は,何を狙ってのことなのでしょうか。

「なんかね,作品の色んな姿を見てみたかったの。みんなで演出を話し合うってことは、全然違う個体から十人十色の案が出てくるわけで,全部混ぜたら予想もつかないような化学反応が起きるんじゃないか?演劇ゲームを通して試しに考えを聞いてみても,やっぱり表現の仕方や演出に対するスタンスが全員違って,それぞれの良さがあることが分かった。それにそうやって色んな意見を聞くことは,自分の勉強にもなるしね」

 

―――他の現場では,主宰や演出の人がいわゆる“トップダウン式”で仕切ることも多いと思いますが。

「そうね,その方が効率は良いよね。

 前、脚本担当の人が作った脚本に、みんなでこうしてみたらどうだって考えたことがあったの。そしたらその人は『脚本に口出すな!』って。私たちが考えたことは叩きつけられてしまいましたとさ。それ以来なんというか、一方通行?で何かを進める時に日の当たらないまま終わったであろうアイデアたちがちらつくようになった。」

 

―――そうだったんですね。とは言え,学生最後の舞台でそのような“挑戦”をするのは怖くなかったのですか。失敗して嫌な思い出が残る可能性もあったのでは。

「んー,それよりも,色んなことを試行錯誤して,挑戦して,それで失敗して,そういうことが許されたいんだよね。ちょっとギスギスしても,失敗してもいいじゃん!って私はみんなに思ってるし、みんなも私に思って欲しい。からまずは私が率先して挑戦して失敗してみせる」

 

―――ギスギスですか。

「そう,特にオンライン稽古だと,停滞がギスギスや気まずさに直結しちゃうの!座組メンバーの優しさに支えられているよ!」

 

 

オンライン稽古について

 

―――オンライン稽古ってどんな感じですか。

「結構良いところもあるよ。やっぱり移動しなくて済むから,体力も削られないし。就活とかバイトで忙しい人も,スキマ時間で参加できるし。

でも,どうしても声のラグが生まれちゃうのは困るかな。特に『食道楽』は集団でワッと盛り上げる演出も多いから,余計に大変かも。ディズニーのパレードとかショーみたいに,みんなでワアアアってやる感じの作品なんだけど」

 

―――画面は全員オフなんですか?

「他の企画では全員顔出しで稽古してるところもあるけどね。うちは,私だけ顔出して他は全員カメラオフ」

 

―――そんな悲しいことが。

「不思議だね。だから稽古するのは声がメインかな」

 

 

緊急事態宣言を受けて

 

―――今まさに緊急事態宣言が延長されようとしていますね。

「そうですね!!延長されたので、会場で使おうとしていた施設が開かないので、公演できなくなりました!ポシャです。それでも,つきみ企画は声だけでも形に残したいとは考えているよ。とはいえ、切り替えるのにはすごく元気が必要だ。ウワ〜〜!」

 

―――2月の稽古開始時から既にこのような事態は想定されていて,様々な葛藤があったと思います。それでもここまでモチベーションを保っていられたのはどうしてですか。

「演劇をやりたい理由と演劇ができない理由は違う。それで,上演を目標にするのではなくて,稽古そのものを楽しもうって思うようにしたんだよね。稽古をしていたらたまたま公演の機会が舞い込んできた!みたいな。演劇をするって、公演をするだけではないから。最後は、みんなと演劇のこと考えたり,部室の一時みたいにやんややんやしたかった。それに,できないかもしれないことに期待すると,本当にできなくなった時にリスクとかコストがでかいと思ったから」

 

―――なんだか前向きな考え方だなと思います

「どうなんだろね。そうは言っても,やっぱり公演したい気持ちはあるし,すごく悔しい。それをどうにかごまかしているだけかな」

 

卒業後のこと

 

―――卒業しても演劇は続けますか。

「続ける!同期が代表をやっている演劇ユニットに所属しているので,そこで。今は宣伝美術だけど,機会があれば役者もやりたいな」

 

―――私はつきみさんのファンなのでそれを聞いてとても嬉しいです。

「やった〜〜!私ちょこちょこファンいるんだよ〜〜。公演の後に『ファンです!』って言ってくれる人がいたり」

 

―――すごいです,ファンはどれぐらいいるんですか?

「3とか4とか…?」

 

―――では最後に,ファンのみんなに向けて一言。

「見つけてくれてありがとう?かな?」

 

 

アフタートーク

べ「卒公終わった次の日は何するんですか?」

つ「一人で歩く。学生証で入れる大学提携の美術館に行きたいからそこに向けてひたすら歩く。それで学生証の元を取る」

べ「…頑張ってください」

 


前の記事:演劇と永遠

次の記事:架空の歌詞